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講演会 2001.07.14 尾道 |
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「乳癌の標準治療の意味するもの」
広島市民病院外科
檜垣 健二 先生
1)標準治療とは
現在、科学的な経験に基づいた乳癌治療の指針づくりが行われようとしている。
科学的な経験とは
証拠に基づいた医療(Evidence Based Medicine:EBM)
臨床試験(Randomized Clinical Trial:RCT)
2種類以上の治療剤を各群にわけ、効果と副作用を比較する。患者は無作為にふりわける。
2)現在全国規模で化学療法の治療効果や副作用などを比較検討する治験が行われている
(化学療法のうち次の二つの治療法にふりわけて比較する)
CEF療法:エンドキサン |
CMF療法:エンドキサン |
(赤色点滴) エピルビシン |
(黄色点滴) メソトレキセート |
5−FU |
5−FU |
CMF療法と比べて10年で |
長年世界の標準治療
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5%の生存率の向上 |
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脱毛等の副作用が必発 |
副作用が軽度 |
約1%以上の心不全の増加
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3)標準治療の実施にあたって、以下を検討する
患者の評価 1:腫瘍の大きさ(2cm以下か、以上か)
年齢(35才以上か、以下か)
ホルモン感受性(ホルモンレセプターの有無)
グレード分類(グレードTUV)
リンパ節転移の有無
患者の評価 2:年齢(社会的年齢) 基礎疾患 心機能 血液検査
副作用と効果の理解を確認する(脱毛、閉経の可能性)
患者の意思による決定である。
4)リンパ節転移(−)乳癌のリスク分類
因子 |
低−中危険群 |
高危険群 |
腫瘍の大きさ |
2 cm以下 |
2 cm以上 |
ER/PgR |
TーU |
UーV |
年齢 |
35才以上 |
35才以下 |
*ER:エストロゲンレセプター、PgR:プロゲステロンレセプター
これが陽性の場合、ホルモン療法に反応性がある。
5)リンパ節転移(−)乳癌に対する補助療法
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ホルモン反応性 |
ホルモン不応性 |
閉経前 |
閉経後 |
閉経前 |
閉経後 |
低ー中危険群 |
ホルモン療法orなし |
なし |
なし |
高危険群 |
ホルモン療法+化学療法 |
化学療法 |
化学療法 |
6)リンパ節転移(+)乳癌に対する補助療法
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ホルモン反応性 |
ホルモン不応性 |
閉経前 |
閉経後 |
閉経前 |
閉経後 |
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ホルモン療法+化学療法 |
化学療法 |
化学療法 |
7)ホルモン剤(ノルバデックス)と子宮癌
ノルバデックスの副作用として子宮体癌を4倍増加させる。内服中は定期的な子宮体癌検診が必要である。
しかし治療効果が副作用よりはるかに高い有効な薬である。
ホルモン感受性乳癌への適応が高い。
8)新薬:ハーセプチンは安全な新薬か?
6月1日より日本でも使用可能となった。
乳癌のガン遺伝子(HER-2 遺伝子)に対する抗体。
乳癌の30%にこの遺伝子があり、悪性度が高い。全ての乳癌患者に使用できる訳ではない。
この遺伝子をもつ進行再発乳癌に適応。
副作用として悪寒発熱、心機能の低下がある。
エピルビシンとの併用は禁忌。
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